フォト語り10:「地下鉄のシンデレラボーイ」
「あっ!いた・・・」
いつも乗る地下鉄に、彼がいた。
最初はカッコイイ人だな・・って思う程度だったが、
偶然にも何度か出会ううちに、いつしかアサミは、
その彼に会えますように・・と願う様になっていた。
会えずにガッカリ、会えてニッコリ、そして、
別れてションボリ・・・。そんな繰り返しだった・・。
そのうちに、その彼と彼の友達が交わす会話から、
彼の名前が「ケン」だという事も分かった。
「ケン・・・・」
そっと呟いて、小さな胸の内で、その想いを育んだ。
そんなアサミの想いが神様に通じたのか?偶然か?
思いがけない出来事が・・・。
ある日、電車内を移動していたケンが
アサミの横を通った時、彼の携帯の豚ちゃんストラップが、
アサミの長い髪に引っかかってしまったのだ。
「あっ、ゴメン!」
「だ・だいじょうぶ・・」
「よく、この電車に乗ってるよね?」
「え?え・ええっ・・」
からんだ糸がほどける様に一言三言交わした言葉が
すぐに楽しい会話になった。
この時間がずっと続けば良いのに・・・と思うアサミだったが、
無情にも電車は目的の駅に着いてしまった。
「私、ここで降りるの・・・」
と、電車を降りたアサミだが、何故か?つられて
一緒に降りてしまったケン・・。
「・・・」
「・・・」
見つめ合う二人。一瞬、止まった時間。
”Ruuuuuuuuuu!!!!”
チャイムが鳴り、我にかえるケン・・・。
「あっ、お・オレ、帰らなくっちゃ・・・」
せめて携帯ナンバーを・・と思ったアサミだったが、
慌てて電車に戻るケン。
「さ・さよなら・・」
気が付くと、そこには ・・・・

ケンのスニーカーが・・・。
その後、そのスニーカーを手がかりに
アサミが、シンデレラボーイを探したかどうかは
誰も知らない・・・・。
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